『美幸 ―アンコンディショナルラブ―』出演の鈴木浩介と大島優子
2010年、2013年に東京で上演、小説化もされた二人芝居『美幸』がキャストも新たに再演される。人気放送作家の鈴木おさむが妻でお笑いトリオ「森三中」のメンバー、大島美幸が学生時代に受けたいじめ体験をもとに描く究極の愛の物語だ。中学時代の壮絶ないじめが原因で心を歪ませた美幸は職場でいじめにあう雄星に自分の過去を重ね合わせ、彼に無償の愛を誓う。雄星を苦しめる原因を排除しようと、美幸の愛はどんどんエスカレートするのだが……。宣伝チラシでは出刃包丁を手に不適な笑みを浮かべる元AKB48の大島優子が主人公の美幸を、愛する雄星ほか全5役を鈴木浩介が演じる。舞台2作目の大島と初共演となる鈴木に互いの印象と作品の魅力について訊いた。
●「美幸の愛は衝撃的だけど痛快でカッコいい。観客にはどう映るのか楽しみです」(大島)
-- 台本を読まれた感想は?
大島:まず演出の鈴木おさむさんからラジオの生放送中に出演のオファーを頂いて、その時は二人芝居、美幸、再演という3つの要素しか知らされませんでした。実際に台本を読んだ感想は「これやるの!?」と考えもしなかったぐらいに衝撃的でした。ただ最後まで読んでみると、男性への復讐とか、自分の人生をどう生きていくのかということを女ながらに考えるという点では痛快で気持ちいいなと、女性なら美幸の気持ちに寄り添えると思います。でも浩介さんはこの物語を悲痛に感じたようで、観客にはその辺りどう受け止められるのか楽しみですね。
大島:まず演出の鈴木おさむさんからラジオの生放送中に出演のオファーを頂いて、その時は二人芝居、美幸、再演という3つの要素しか知らされませんでした。実際に台本を読んだ感想は「これやるの!?」と考えもしなかったぐらいに衝撃的でした。ただ最後まで読んでみると、男性への復讐とか、自分の人生をどう生きていくのかということを女ながらに考えるという点では痛快で気持ちいいなと、女性なら美幸の気持ちに寄り添えると思います。でも浩介さんはこの物語を悲痛に感じたようで、観客にはその辺りどう受け止められるのか楽しみですね。
『美幸 ―アンコンディショナルラブ―』出演の鈴木浩介と大島優子
鈴木:男性側からするといじめという理不尽な過去から、美幸が陥ってしまった今の状況を思うと切なくて、初めて読んだときは苦さが残りました。でも大島さんの「痛快」という感想を聞いて、そういう観点でも観られるんだなと新鮮で、稽古を重ねるなかでどんどん作品に対する印象が変わってきている。同時にとんでもない作品を引き受けてしまったなと。二人とも膨大な状況説明の台詞があるので、掛け合いなんですけど、そこにはアイコンタクトがない。
『美幸 ―アンコンディショナルラブ―』出演の鈴木浩介
大島:芝居のコミュニケーションがないんですよね。
鈴木:美幸は手紙を介して思っていることを説明していく。ぼくは弁護士役での出番が一番多いのですが、裁判で彼女が犯したことについての経緯を話していく。構造的に相当難易度の高い舞台だなと、稽古を始めて実感しています。
鈴木:美幸は手紙を介して思っていることを説明していく。ぼくは弁護士役での出番が一番多いのですが、裁判で彼女が犯したことについての経緯を話していく。構造的に相当難易度の高い舞台だなと、稽古を始めて実感しています。
-- 法廷劇がベースとなるのでしょうか。
大島:裁判中なんですけど、いじめの場面なども二人で見せていくので……観客は「何を見ているのだろう」と思うかも(笑)。裁判の傍聴者やクラスの一員、ドラマをみているカメラマンの目線と捉える方もいるでしょうし。いろんな状況を私たちが表現するので、その空間に入っていただけたら嬉しいなと思います。
大島:裁判中なんですけど、いじめの場面なども二人で見せていくので……観客は「何を見ているのだろう」と思うかも(笑)。裁判の傍聴者やクラスの一員、ドラマをみているカメラマンの目線と捉える方もいるでしょうし。いろんな状況を私たちが表現するので、その空間に入っていただけたら嬉しいなと思います。
-- 再演にあたり、変更点などあれば。
鈴木:キャストも違いますし稽古で積み上げられるものも変わってくるので、おさむさんの中では再演という意識はないようです。バージョンアップというよりは、別物という感覚だと思います。
大島:セットも変わるそうですよ。また今回は音楽を中田ヤスタカ(CAPSULE)さんが担当されるので、新たな音楽によってもまったく違う色に見えたりする。おさむさんもそこが今回すごく面白いようです。
鈴木:キャストも違いますし稽古で積み上げられるものも変わってくるので、おさむさんの中では再演という意識はないようです。バージョンアップというよりは、別物という感覚だと思います。
大島:セットも変わるそうですよ。また今回は音楽を中田ヤスタカ(CAPSULE)さんが担当されるので、新たな音楽によってもまったく違う色に見えたりする。おさむさんもそこが今回すごく面白いようです。
-- 出刃包丁を持った美幸が不適に笑うチラシはインパクトがあります。怖い作品にもイメージされますが。
大島:ホラー系でもないですし、狂気の怖いともまた違う。
鈴木:怖いのかな? それよりは切なくて痛い感じの作品です。
大島:ホラー系でもないですし、狂気の怖いともまた違う。
鈴木:怖いのかな? それよりは切なくて痛い感じの作品です。
-- 美幸という女性像については?
大島:とても素直でまっすぐな女性だなと思いました。彼女自身は何もやっていない、周りが彼女を動かしているんです。周囲によって少しズレた人生のレールを敷かれたために、彼女にとっては普通の愛するという思いが、復讐になってしまう。たまたまの巡り合わせがそういう方向に進ませたのだなと考えると美幸は普通の人で、ただ純粋に自分の吐き出したいものや思いをもって生活していただけ。今は稽古を積み重ねる中で、どんどん美幸が愛しくなってきています。
大島:とても素直でまっすぐな女性だなと思いました。彼女自身は何もやっていない、周りが彼女を動かしているんです。周囲によって少しズレた人生のレールを敷かれたために、彼女にとっては普通の愛するという思いが、復讐になってしまう。たまたまの巡り合わせがそういう方向に進ませたのだなと考えると美幸は普通の人で、ただ純粋に自分の吐き出したいものや思いをもって生活していただけ。今は稽古を積み重ねる中で、どんどん美幸が愛しくなってきています。
『美幸 ―アンコンディショナルラブ―』出演の大島優子
-- 鈴木さんも、大島さんの変化について感じますか?
鈴木:これは演出家も言ってましたが、稽古も初期の段階でまだ台詞も入っていない状況なのに、美幸のキャラクターをおおまかにガッとつかんだ瞬間があって、役柄の芯を掴むのがめちゃくちゃ早かったんじゃないかな。そこからの積み重ねは、停滞することもなかったですし、キャラクターとして進化しているのを感じます。
鈴木:これは演出家も言ってましたが、稽古も初期の段階でまだ台詞も入っていない状況なのに、美幸のキャラクターをおおまかにガッとつかんだ瞬間があって、役柄の芯を掴むのがめちゃくちゃ早かったんじゃないかな。そこからの積み重ねは、停滞することもなかったですし、キャラクターとして進化しているのを感じます。
-- また、美幸の台詞には過激なものもあるようですが。
大島:毎日言っているので、これで言い慣れてしまったらどうしよう(笑)。劇中ではなぜその言葉が必要なのかを説明する場面があって、それにより私自身もその言葉の見方が変わりました。お客様にも「なるほど、どうだね!」と思っていただけるような説明ができれば。
-- 一方、鈴木さんが演じ分ける5役について。どのような役柄ですか?
鈴木:まず美幸が好きなる雄星と、彼を職場でいじめる上司の男。美幸の人生を一番最初に狂わせてしまう男と、彼女を法廷で弁護する弁護士、あとは”魚”かな(笑)。
大島:いじめる役といじめられる役の両方を、一人で演じるんですよね。
鈴木:大島さんもやってますよね、美幸と美幸を追い込んでいく中学時代の同級生の女の子の役を。
大島:そうですね、二人で分担しながら色々やってます(笑)。
鈴木:まず美幸が好きなる雄星と、彼を職場でいじめる上司の男。美幸の人生を一番最初に狂わせてしまう男と、彼女を法廷で弁護する弁護士、あとは”魚”かな(笑)。
大島:いじめる役といじめられる役の両方を、一人で演じるんですよね。
鈴木:大島さんもやってますよね、美幸と美幸を追い込んでいく中学時代の同級生の女の子の役を。
大島:そうですね、二人で分担しながら色々やってます(笑)。
-- その都度、衣装やメイクも変えるのでしょうか?
鈴木:ビジュアルはこのままです。衣装もジャケットを脱いだり着たりする程度。
鈴木:ビジュアルはこのままです。衣装もジャケットを脱いだり着たりする程度。
-- 振り向いた瞬間に違うキャラクターに変わっているようなイメージ?
鈴木:そうですね、それが違う人に見えていたらいいんですけど。今のところ、非常に厳しい状況です(笑)。
大島:大丈夫です。ちゃんと違う人になってます!
鈴木:そうですね、それが違う人に見えていたらいいんですけど。今のところ、非常に厳しい状況です(笑)。
大島:大丈夫です。ちゃんと違う人になってます!
●「美幸の人生を体感し、おのずと”無償の愛”について考えられる作品です」(鈴木)
-- 初共演のお二人ですが、互いの印象は?
大島:ドラマや舞台でよく拝見していたので、じつは鈴木浩介さんとの共演が決まったときは嬉しかったです。
鈴木:今初めて知りました。
大島:初めて話しました(笑)。今回は1人5役ということで、どんなお芝居を見せていただけるのだろうと、間近で刺激を感じられることがとても嬉しくて。稽古場では毎回動きも違いますし、それによって私自身も動かされる部分があるので、すごく安心して身をおける。
鈴木:大島さんはものすごく動物的で、頭で考えるよりも先に感性で体が動く。柔軟性もあり、同時にどこか冷静に自分を客観視している部分もあって、相反する感性を同時に持ち合わせている方という印象ですね。
大島:ドラマや舞台でよく拝見していたので、じつは鈴木浩介さんとの共演が決まったときは嬉しかったです。
鈴木:今初めて知りました。
大島:初めて話しました(笑)。今回は1人5役ということで、どんなお芝居を見せていただけるのだろうと、間近で刺激を感じられることがとても嬉しくて。稽古場では毎回動きも違いますし、それによって私自身も動かされる部分があるので、すごく安心して身をおける。
鈴木:大島さんはものすごく動物的で、頭で考えるよりも先に感性で体が動く。柔軟性もあり、同時にどこか冷静に自分を客観視している部分もあって、相反する感性を同時に持ち合わせている方という印象ですね。
『美幸 ―アンコンディショナルラブ―』出演の大島優子
-- 大島さんは舞台2作目ですが、初舞台作(白井晃演出、稲垣吾郎主演の舞台『No.9-不滅の旋律-』)の経験で生かせている部分はありますか。
大島:確実に言えるのは声ですね。過去に声帯結節の手術をうけたことがあるので、声を使う舞台には当初怖い思いもありました。でも正しい発声法を学んだことで、大声を出しても叫んでも大丈夫と分かり、勇気をもらいました。これなら表現の幅も広がるなと。
大島:確実に言えるのは声ですね。過去に声帯結節の手術をうけたことがあるので、声を使う舞台には当初怖い思いもありました。でも正しい発声法を学んだことで、大声を出しても叫んでも大丈夫と分かり、勇気をもらいました。これなら表現の幅も広がるなと。
-- 二人芝居では台詞の量にも驚かれたのでは?
大島:ベテランの浩介さんの方が毎日「覚えられない」とため息をつかれるので、その姿に勇気付けられています(笑)。
鈴木:舞台2作目にしてこの分量の台詞を素直に受け止めて演じている大島さんは、そのこと自体「極太」だなと。凄いことだと思います。
大島:覚えるのは得意かもしれないですね。でも一回吐き出すとダメですね。どんどん覚えていくと前の方から忘れていっちゃう(笑)。
大島:ベテランの浩介さんの方が毎日「覚えられない」とため息をつかれるので、その姿に勇気付けられています(笑)。
鈴木:舞台2作目にしてこの分量の台詞を素直に受け止めて演じている大島さんは、そのこと自体「極太」だなと。凄いことだと思います。
大島:覚えるのは得意かもしれないですね。でも一回吐き出すとダメですね。どんどん覚えていくと前の方から忘れていっちゃう(笑)。
-- 作品のテーマにちなみ、大島さんにとって「究極の愛」とは。
大島:一番は親が子に注ぐ愛だと思うんですけど、人それぞれちがいますよね。美幸に関しては愛情の「愛」は同時に「哀」でもあって、哀しみを背負った人生の中から生まれた愛が、また違う形となって最後の展開に出てくる。そこで彼女は「人間はこういうものなんだよ」と、別の誰かに語りかける……難しいですよね説明が、観てもらわないと分かんないかな(笑)。ただ、美幸の愛情も究極の愛だな、かっこいいなと素直に思いました。
大島:一番は親が子に注ぐ愛だと思うんですけど、人それぞれちがいますよね。美幸に関しては愛情の「愛」は同時に「哀」でもあって、哀しみを背負った人生の中から生まれた愛が、また違う形となって最後の展開に出てくる。そこで彼女は「人間はこういうものなんだよ」と、別の誰かに語りかける……難しいですよね説明が、観てもらわないと分かんないかな(笑)。ただ、美幸の愛情も究極の愛だな、かっこいいなと素直に思いました。
『美幸 ―アンコンディショナルラブ―』出演の大島優子
-- 最後に、この作品を通して伝えたいことは。
大島:愛情の形って人それぞれ違うから、その愛情をどうやって生み出し伝えていくか。そのことをすごく考えさせられる作品だと思います。怖いお話ではないですし、不愉快には終わりません。
鈴木:僕自身、今までの人生で考えたこともなかったんですけど、この作品を通して見返りを求めない「無償の愛」が存在するんだなと思いました。美幸の気持ちを体感してもらえればおのずと、観客の皆様もそのことについて考えるきっかけになると思います。
大島:愛情の形って人それぞれ違うから、その愛情をどうやって生み出し伝えていくか。そのことをすごく考えさせられる作品だと思います。怖いお話ではないですし、不愉快には終わりません。
鈴木:僕自身、今までの人生で考えたこともなかったんですけど、この作品を通して見返りを求めない「無償の愛」が存在するんだなと思いました。美幸の気持ちを体感してもらえればおのずと、観客の皆様もそのことについて考えるきっかけになると思います。
『美幸 ―アンコンディショナルラブ―』鈴木浩介と大島優子
撮影・インタビュー・文=石橋法子
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